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長編SS「高町フェイト、始まります」その8

久しぶりに高町フェイトの続きを書きました!

今回は3人称で書いているのでちょっと雰囲気が違うかも、とか。



前回から9ヶ月も間が空いていたんだな……と思うと、続きを期待していた人に申し訳ねえ!

これから暫くはネットでのSS更新を中心としていこうと思っているので、

サイトの更新間隔が1ヶ月、なんてことは無くなると思います。



そして去年貰っているリクエストも消化試合に入ります!

今度は有言不実行ではなく、有言実行リリカル師匠で!



それではSSは続きから!



<大事なお知らせ>

 ここ数ヶ月に貰った拍手とコメントについてですが、サイトを仕切りなおすという意味合いから、

 返信しない方向で行こうと考えております。

 返信を期待されていた方々がおりましたら、ご期待に沿えず真に申し訳ありませんでした。

 その代わり、これからは真面目にサイト更新をしていこうと思います。

 以前から見ていただいている方については、変わらぬご支援を宜しくお願いしますm(_ _)m

 このサイトを初めて見る方がもし居ましたら、これから応援宜しくお願いします!
新年早々、高町家の居間は異様な空気に包まれていた。



テーブルを囲うのは二組の新婚婦妻(しんこんふさい)。

高町フェイト・なのは婦妻と、スバル・ティアナ=ナカジマ婦妻だ。



テーブルの中心には、所在無く置かれている引っ越し祝い。

スバルとティアナの名前が書かれた帯で巻かれた、フェイスタオル。



高町婦妻の目の前に正座で座っていたナカジマ婦妻は、そのタオルが愛おしく思えた。

何故なら、なのはさんとフェイトさん両名の鋭い視線を浴びて、体中から脂汗が吹き出る思いだったから。



そこにあるタオルで汗を思い切り拭きたかった。

けれど、それは叶わないどころか、ナカジマ婦妻は指一本動かすことが出来ない!



蛇に睨まれたカエル、元教官に睨まれた教え子。

動きたくても動けないのは仕方の無い話だった。



「ねえ……スバルとティアナ?」



なのはが重い口を開く。

それを聞いてビクンと体を竦める二人。



視線の先では、なのはが魔力を漲らせていた。

なのはの周りが蜃気楼で揺らめいているように錯覚するほど、彼女は濃密な魔力を身に纏っていて。



「ちょっと、もう一度引っ越そうか」

「「そ、それは流石に勘弁してください!」」



なのはの言葉に慌てて立ち上がるナカジマ婦妻。

引っ越そうにも25年のローンが残っているナカジマ宅は新築ピカピカ。



『ティア、二人で頑張って返済していこうね!』

『う、うん……い、一緒に、ね……』



そんな話をつい先日したばかり。

だからこそ元上司の命令とはいえ、ここを離れるわけにはいかなかった。



「なのはさんの指示とは言え、ここを離れるわけにはいきません!」

ティアが震えながらも意地を張り。



「そうですよ、なのはさん! ここは私とティアの愛の巣……って、なんで急に殴るのティア!」

「うっさい!」

スバルが惚気ながらティアと婦妻漫才を繰り広げる。



だが、なのははそれを見ても目が笑っていなかった。



ちなみにフェイトは別にナカジマ婦妻が引っ越してくることには異論はないのだが、

なのはの手前わざと鋭い眼光で睨んでみたりして。



むしろ、今のなのははフェイトでさえ恐ろしいと思っていた。

スバルとティアナの二人には悪いけど、フェイトとしてはなのは側の空気を読むしかなかった。



「そう……どうしても引っ越さないと言うの……」



なのはは明らかにイラついていた。

別にカルシウムが足りてないとか、あの日が近くてイライラしているとかそういうものではなく。



「なのはさん、何で私たちに引っ越して貰いたいんですか……?」

スバルが空気を読まず質問するのを、ティアは「ちょ!」と思わず慌てて止めようとする。



そして、それになのははこう答えた。





「だって……だって二人がすぐ傍に居たら、フェイトちゃんとイチャイチャしづらいじゃない……!」





「は?」
「え?」
「な、なのは!?」




3人が思わず聞き返す。

なのはは、鋭い眼光から……気付けばちょっと涙目になっていて。

ナカジマ婦妻を「うー」と三白眼で睨みつけていた。



「フェイトちゃんとイチャイチャしてる時に、身近に知っている人がいたら……やりづらいじゃない!」



それを聞いたなのは以外の3人は、胸を貫かれる思いだった。



『な、何この可愛いなのは(さん)……!』



なのはとしては至極真面目に答えていたのだが、締まらなかった。

スバルとティアナは困ったように顔を見合わせ、フェイトは今にもなのはに抱きつきたくて仕方がなかった。



「べ、別にフェイトさんとの時間を奪ったりするわけではないですから……」

安心してください、とティアナが呼びかけても。



「だけど……」

困惑しながら、いつの間にかフェイトにしがみ付くなのは。

フェイトはパライソにでも逝きそうなほど幸せそうな表情を浮かべていた。



「なのはさん、私はティアにしか興味が無いですから……だから痛いってティア!」

「恥ずかしいこと言うな、馬鹿っ!」

二人が再度婦妻漫才を繰り広げても。



「フェイトちゃーん……」

なのはに体を委ねられたフェイトは萌死寸前だった。



その時、フェイトがハッと意識を取り戻す。



「そっか、なのはは夜の時に大きな声を上げるから」



「だから二人に離れて欲しいんだね!」とそう言うフェイトの体がくの字型に曲がった。

なのはが魔力を篭めたコブシでフェイトの鳩尾を殴りつけたからだ。



「な、な、なんてこと言うのフェ、フェイ、フェイ……!」



フェイトを殴りつけてなお、混乱しているなのは。



「大丈夫です、なのはさん!」



そこに割って入るスバル。



「ティアもそれをかき消すくらい、夜に大きな声を上げ痛いっ!」

「アンタに今から大きな声で悲鳴を上げさせてあげようか!?」





高町家の居間は、混沌とした空気に包まれていた。

なのははフェイトを折檻し、ティアナはスバルを強かに殴りつける。



そして、殴られている筈のフェイトとスバルは恍惚とした表情を浮かべていて。





「……なんだかんだで似たもの同士なんだよね……」

それを遠目で見ていたヴィヴィオは大きく溜め息を吐いたとか。




結局、お互いの私生活には神聖不可侵という事で決着がついた両婦妻。

ただし、夜になるとお互いの家から大きな声が聞こえたとか。
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