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短編SS「未来に繋がる、魔法の言葉」

久々にSS書きました。
リクエストSSではないけれど;

ちゃんと覚えているんですが、もう少しだけ待ってください。
私……締め切りに追われてるんですw

某所の原稿と、自分の本。
今度はオフセットで出したいなぁ……ってw

という訳で、リクエストSSはもう少し待ってねw
相互リンク貼るって約束の人も(10件くらい溜めてるけど;)ぼちぼちやるので待っててください><



今回のSSは製作時間1時間半だったり。
だけど、割と自分の中では最高の出来だったりしますw

そして、今回も甘いなのフェイで行かせて貰います。
もうゴールしてもいいよね……?(ぉ



それでは、続きからー。
「なのはは私のことが、好き、嫌い、好き、嫌い」

花占い。
本気にする人なんて滅多に居ないのだろうけれど。

「好き、嫌い、好き」

昔の……なのはと仲良くなったばかりの頃は、何でも鵜呑みにしてしまっていたので。

「嫌い……」

だから、このときもすっかり信じ切ってしまっていたのだと思う。
少なくとも、花占いの結果を笑い飛ばせるような度量は当時の私には無かったんだ。




「なのは……」

フェイトちゃんが緑の広場から帰ってきた。
草花を摘んでいるフェイトちゃんがあまりにも絵になっていたので、
私はわざと近寄らないようにして遠くから眺めていたんだけど。

「どうしたの、フェイトちゃん」

今にも泣きそうな顔をしているフェイトちゃんを見ると、それは間違いだったんだなって思う。
右手には、無残にも花びらがむしられた花が。

「なの、は……。 なのはっ!」

私に飛びついてくるフェイトちゃん。
ちょっと、苦しいよ。 本当にどうしちゃったのかな?

「何があったの? 泣いてたらわからないよ?」

わんわん泣いているフェイトちゃんの背中を、後ろに回した手で撫で擦ってやる。
しばらくすると落ち着いたのか、ポツポツと話し始めた。

「はな……が……きらいで……っ」

花が嫌い?
あんなに楽しそうに戯れていたのに?

「フェイトちゃんは花畑が嫌いなの?」
「ちが……くて……っ。 っ、そうじゃなくてっ!」

じゃあ、なあに?
私は急かすことなく、ポンポンと背中を軽く叩いて落ち着かせながら話を促す。

「私、花占い、してて……」

花占い……。

好き、嫌いのあれか。
そっか、だから花びらのむしられた花を持っていたんだね?

「エイミィに教わったやり方でやったら、なのはが私のこと……き、嫌いって……」

……ああ、なんだ、そういうことか。
ようやく分かった、その程度……。

その程度が、フェイトちゃんの心には重く受け止めちゃったんだね?
だったら、私が軽くしてあげるよ?

魔法で空に浮かび上がるみたいに、フェイトちゃんの心を軽くしてあげるから。





「フェイトちゃん、もう一回向こうに行こ?」
「え……?」

なのはに手を引かれ、緑の広場にもう一度。
さっきと同じような花を見つけては、私の手に握らされた。

「フェイトちゃんは私に嫌われたくなかったの?」
「う、うん……」

私が所在無く花を握り締めていると、なのはが私を私の背中ごと抱きしめてきた。

「な、なあっ!?」

私の肩になのはがあごを乗せて来て、なのはの息遣いがこっちに伝わってくるみたい。
思わず息を呑んでしまう。

私の両方の手の甲に、添えられるなのはの両の手の平。
なのはにとっては苦しい体勢から、私の両手をマリオネットみたいに器用に操って。

「じゃあ、行くよ?」
「う、うん……」

花びらが一枚ずつむしられていく。

「私はフェイトちゃんのことが、好き、好き、好き、好き」

なのはが魔法を唱える。
私のことが好きだって、嫌いなところがどこにもないって、魔法みたいな素敵な言葉。

「なのは。 なのはは私のこと……」
「好き、好き」

最後の一枚がむしられる。

「私はフェイトちゃんのことが、大好き!」

終わる頃には、さっきまでの花占いの不安感は消えていた。





「でね、エイミィが……」

事の発端は、どうやらエイミィさんのイタズラだったらしい。

『花占いでねー、嫌いって結果になると、その人から近い内に嫌われちゃうらしいよ?』

なんて、そんな入れ知恵をされては純粋なフェイトちゃんが信じきってしまうのも無理は無い。
だけど……。

「フェイトちゃん?」
「う、うん」

「私はフェイトちゃんの事がちょっと嫌いです」
「ええっ!?」

そういうと、さっきまで俯いていた顔を跳ね上げて。
泣きそうな瞳でこちらを見てくる。

……そんな顔しないで。
私はフェイトちゃんを虐めたいわけじゃないんだから。

「私の気持ちを信じてくれない、そんなフェイトちゃんが嫌いなの」
「な、なのは……」

「もっとね。 もっと、私がフェイトちゃんのこと好きって気持ち、信じて欲しいかな……って」

フェイトちゃんが目を見開く。
ただ見開いたのではなく、爛々と瞳を輝かせて。

……ああ、もう。
本当に可愛いなぁ、フェイトちゃん。

私が顔を熱くして、勇気を出して好きって言った甲斐があるかも。
このフェイトちゃんの笑顔を見ると、ついそう思ってしまう。

「信じるよ! これからはもっとなのはの事を信じるから!」

フェイトちゃんが、真っ直ぐにこちらを見つめてくる。
ああ、吸い込まれそう……。

だけど、見つめるだけじゃ駄目だよ?
態度で示してくれなきゃ、ね?

私は、後ろ手に隠していた花をフェイトちゃんの目の前に差し出す。
そのままくるり、フェイトちゃんに背中を向けて。

「私もしたいなあ。 フェイトちゃんと、花占い」

フェイトちゃんが私を遠慮がちに抱きしめる。
好き、好きって、いっぱい囁いて貰う。

沢山の好きを共有した。
そんな9歳の、私たちの懐かしい思い出。





――19歳になった今。

私は、昔を思い返して花占いをしてみた。

「なのはは私のこと、好き、嫌い、好き、嫌い」

結果は、今回もまた。

「嫌い……」

だけど、今の私はそのくらいでは落ち込まない。
だって、私たちの間には素敵な魔法があるから。

――さあ、今からなのはのところに行って、またあの魔法をかけて貰おう。

今も私たちの心に根強く残る、とてもとても素敵な呪文。



「なのは、大好きだよ」
「フェイトちゃん。 私もフェイトちゃんのこと、大好きだよ」



魔法は響く。
何年経っても、私たち二人の心の中に。
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